法人カードは日々の経費精算を効率化する道具ですが、実は決算期の前後でこそ判断が求められる場面が増えます。期末ぎりぎりに使った分はどの事業年度の費用になるのか、年払いの契約をカードで払ったらどう扱うのか。こうした論点は、月次の処理では表に出てきません。
カードの引き落としは翌月以降ですが、費用として計上する時期は引き落とし日で決まるわけではありません。ここを取り違えると、決算書の数字がずれます。
この記事では、法人カードと決算の関係を、計上時期という軸から整理します。日々の経費精算のルール作りとは別の、年に一度の論点をまとめました。

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費用はいつの事業年度に計上されるのか
法人税法が定めている原則
法人税法第22条第3項では、各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額について、別段の定めがあるものを除き三つの区分が示されています。そのうち第2号は「前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」と規定されています。
ここで押さえたいのが、カッコ書きの部分です。償却費以外の費用については、その事業年度の終了の日までに債務が確定していることが損金算入の前提になります。
また同条第4項では、これらの金額は別段の定めがあるものを除き「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする」とされています。
カード払いに当てはめて考える
この考え方に照らすと、カードで支払った経費は、カードの引き落とし日ではなく、商品やサービスの提供を受けて債務が確定した時点が計上の基準になります。カード会社への支払いはその後の決済手段にすぎません。
そのため、期末までに利用した分は、引き落としが翌期であっても当期の費用として計上し、貸方は未払金などで処理するのが一般的な流れです。
個人事業主の場合も考え方は同じです。国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」(令和7年4月1日現在法令等)では、必要経費となる金額は「その年において債務の確定した金額」であるとされ、「その年に支払った場合でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります」と説明されています。
期末をまたぐカード利用の整理手順
決算作業で混乱しやすいのが、期末月の利用分です。次の順番で整理すると漏れが減ります。
- 期末日時点で未計上のカード利用がないか、利用日ベースで洗い出す
- それぞれの取引について、期末日までに債務が確定しているかを確認する
- 確定しているものを当期の費用として計上し、未払金として認識する
- 期末日より後の利用日のものは、当期に計上しない
- 証憑(適格請求書等)が揃っているかを取引ごとに確認する
カード会社の利用明細は締め日単位で作成されるため、事業年度の区切りとはずれます。明細の月をそのまま事業年度の区切りとして使わないことが、ここでのポイントです。
未払金の計上や期末の締め方は、仕訳例を見ながら確認すると理解が早まります。中小企業向けの決算の解説本を1冊手元に置いておくと、毎年の作業の手引きとして使えます。

期末に検討されることが多い制度
期末が近づくと、いくつかの制度が話題にのぼります。いずれも要件が細かく定められているため、内容を正確に押さえておく必要があります。
短期前払費用
タックスアンサーNo.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」(令和7年4月1日現在法令等)では、前払費用は原則として支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものとされています。
そのうえで、法人が前払費用の額で「その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの」を支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、支払時点で損金の額に算入することが認められるとされています。
ただし同ページには、借入金を預金や有価証券などに運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、1年以内の短期前払費用であっても支払時点での損金算入は認められないという注意書きもあります。
短期前払費用の取扱いには「継続して」という要件が含まれています。ある年だけ有利だからという理由で処理方法を変えることを想定した制度ではありません。適用の可否は個別の事情によって判断が分かれますので、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
中小企業者等の少額減価償却資産の特例
タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(令和7年4月1日現在法令等)では、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合、一定の要件のもとにその取得価額に相当する金額を損金の額に算入できるとされています。
主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象法人 | 青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等のうち、常時使用する従業員の数が500人以下(特定法人は300人以下)の法人 |
| 対象資産 | 取得価額が30万円未満の減価償却資産 |
| 年間の上限 | その事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円まで |
| 手続き | 損金経理のうえ、確定申告書等に別表16(7)を添付 |
| 適用期間 | 平成18年4月1日から令和8年3月31日までの取得等 |
なお、対象資産には器具備品や機械装置などの有形減価償却資産のほか、ソフトウエアや特許権、商標権等の無形減価償却資産も含まれ、中古資産も対象になるとされています。また令和4年4月1日以後に取得などする場合は、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものが除かれます。
交際費等の取扱い
接待や会食の支払いをカードで行っている会社では、交際費等の集計も決算の論点になります。
タックスアンサーNo.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和7年4月1日現在法令等)では、飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が10,000円以下である費用は交際費等から除かれるとされています。令和6年3月31日以前に支出された飲食等に係る費用についての基準金額は5,000円以下です。
この規定の適用には、飲食等のあった年月日、参加した得意先等の氏名または名称およびその関係、参加した者の数、費用の額と飲食店等の名称および所在地などを記載した書類の保存が必要とされています。
カード払いの場合、明細には店名と金額しか残りません。上記の要件を満たすには、参加者と人数の記録を別に残しておく必要があります。カードの利用控えやレシートの裏に参加者を書き留める運用を決めておくと、決算時に慌てずに済みます。
参加者を書き込んだレシートは、月ごとに領収書ファイルへ入れておくと、決算前にまとめて集計しやすくなります。
資金繰りの観点でのカードの役割
決算対策というと税額の話になりがちですが、法人カードのもうひとつの効果は支払いのタイミングにあります。
三井住友ビジネスカードの支払日は、公式サイトのカード概要欄で「15日締め翌月10日お支払い」または「月末締め翌月26日お支払い」から選択できると案内されています。締め日と支払日の組み合わせによって、実際の資金が出ていくタイミングが変わります。
現金や振込で支払っていた経費をカード払いに切り替えると、支出のタイミングが後ろにずれます。これは費用の計上時期を変えるものではありませんが、手元資金の余裕という点では意味を持ちます。

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決算前に確認したいチェックリスト
- 期末日までの利用分がすべて帳簿に反映されているか
- 未払金の残高と、カード会社からの請求額が整合しているか
- 各取引の証憑(適格請求書等)が揃っているか
- 交際費等について、参加者と人数の記録が残っているか
- 30万円未満の資産を購入している場合、特例の適用要件を満たすか
- 年払いの契約がある場合、前払費用としての処理が必要か
- 帳簿書類の保存体制が整っているか
最後の項目について、タックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間」(令和7年4月1日現在法令等)では、法人は帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないとされています。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です。
保存期間が長いぶん、紙の書類は事業年度ごとにファイルボックスへ分けておくと、必要になったときに探しやすくなります。
よくある質問
Q1. 期末にカードで備品を買えば当期の経費になりますか?
費用の計上時期は、法人税法第22条第3項第2号の規定により、その事業年度終了の日までに債務が確定しているかどうかで判断されます。あわせて、取得価額によっては減価償却資産に該当し、単年度で全額を損金にできない場合があります。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
Q2. 引き落としが翌期になる利用分はどう処理しますか?
債務が当期中に確定しているものは当期の費用として計上し、支払っていない部分は未払金などで認識するのが一般的な流れです。具体的な処理方法は会計方針によって異なりますので、顧問税理士にご確認ください。
Q3. 年払いのサービス料金をカードで払った場合は?
一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、事業年度終了の時点でまだ提供を受けていない役務に対応するものは前払費用にあたります。支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもので、継続して支払時に損金算入している場合の取扱いがタックスアンサーNo.5380に示されています。
Q4. 30万円未満なら何台でも一括で経費にできますか?
できません。タックスアンサーNo.5408では、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超えるときは、300万円に達するまでの取得価額の合計額が限度になるとされています。事業年度が1年に満たない場合は月数按分となります。
Q5. 会食代が1人1万円ちょうどの場合はどうなりますか?
タックスアンサーNo.5265の規定は「10,000円以下である費用」が交際費等から除かれるという内容です。なお、この金額基準の判定は、法人が適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)により算定した価額で行うとされています。
Q6. カード払いにすると節税になりますか?
支払方法をカードに変えること自体が費用の計上時期や税額を変えるものではありません。計上時期は債務の確定によって判断されます。カード払いの効果は、資金が出ていくタイミングと、明細による記録の残しやすさにあります。

まとめ
法人カードと決算の関係は、「いつの費用になるか」という一点に集約されます。法人税法第22条第3項第2号が定めるとおり、償却費以外の費用は事業年度終了の日までに債務が確定していることが前提です。カードの引き落とし日ではありません。
期末が近づいたら、利用日ベースで未計上の取引を洗い出し、証憑が揃っているかを確認することです。この二つを押さえておけば、決算作業の大半は乗り切れます。
制度の詳細は国税庁タックスアンサーNo.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」や同No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」で確認できます。法人税法の条文はe-Gov法令検索の法人税法で読めます。日々の証憑の扱いについては法人カードの経費精算ルールの作り方の記事もあわせてご覧ください。
※税務に関する記載は、法人税法第22条、国税庁タックスアンサーNo.2210・No.5265・No.5380・No.5408・No.5930(いずれも令和7年4月1日現在法令等)に基づいています。実際の税務処理は個別の事情によって異なりますので、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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