最初にひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。「ブラックリスト」という名前のリストは実在しません。信用情報機関にそうしたリストは存在せず、名前が載る仕組みもありません。
世の中で「ブラックリストに載った」と言われている状態は、正確には事故情報(異動情報)が信用情報に登録されている状態を指します。支払いが一定期間滞ったこと、保証会社が代わりに支払ったこと、法的な手続きを申し立てたことなどが、事実として記録されている状態です。
この記事では、その事故情報がどの機関に、どういう条件で、どのくらいの期間登録されるのかを、三つの信用情報機関の公式資料にもとづいて整理します。あわせて、返済に困っている方が相談できる公的な窓口も紹介します。

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「事故情報」とは何を指すのか
機関によって呼び方も定義も違います。同じ「延滞」でも、条件の書き方が変わります。
CICの「異動」
CICが公開している「『信用情報開示報告書』表示項目の説明」では、返済状況の欄に表示される「異動」の条件が次のように定義されています。
CICの「異動」に該当するもの(公式資料の記載)
・返済日より61日以上または3ヵ月以上の支払遅延(延滞)があるものまたはあったもの
・返済ができなくなり保証契約における保証履行が行われたもの
・裁判所が破産を宣告したもの(破産手続開始の決定がされたもの)
上記に該当しない場合は空欄になります。
機関ごとの用語や仕組みをひととおり押さえておきたい方は、信用情報の基本を扱った本を1冊読んでおくと、開示報告書も読みやすくなります。
JICCの「異動参考情報等」
JICCでは「異動参考情報等」という欄に区分が入ります。公式の項目説明書によると、クレジット等が登録されるファイルMでは「元本・手数料遅延」が「約定返済日から61日以上、または3か月以上元本・手数料ともに遅延している情報」と定義されています。一方、貸金業者からの借入等が登録されるファイルDでは「延滞」が「入金予定日から3か月以上何ら入金がなく元金、利息ともに遅延している情報」とされています。
そのほか、保証履行、代位弁済、強制解約、債権回収、破産申立、特定調停、民事再生といった区分が定義されています。
KSCの「返済区分」
KSCでは、取引情報の返済区分に「延滞」が登録されます。公式資料では「お約束の返済日が過ぎても、一定の期間ご返済をされなかったことを示します」と説明されています。契約終了に関わる区分としては、完了、代位弁済、保証履行、強制回収手続、保証債務未履行、移管、一括化が挙げられています。
さらにKSCには、他の二機関にはない「官報情報」があります。公式資料では「官報によって一般に公開された破産・民事再生手続の情報」とされています。

登録期間は機関ごと・情報の種類ごとに違う
ネット上では「5年」「10年」という数字がよく出てきますが、実際は情報の種類と機関によって分かれています。以下はいずれも記事執筆時点の各機関公式の記載です。
CICの保有期間
| 情報の種類 | 保有期間 |
|---|---|
| 申込情報 | 照会日より6ヶ月間 |
| クレジット情報(異動の有無・異動発生日を含む) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 利用記録 | 利用日より6ヶ月間 |
| クレジット・ガイダンス情報 | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 協会依頼情報(貸付自粛) | 登録日より5年以内 |
| 本人申告情報 | 登録日より5年以内 |
CICの開示報告書には「保有期限」という項目があります。公式資料には「保有期限:25.残債額が『0円』であり、かつ31.終了状況にコメントが登録されている場合、22.報告日から5年間」「保有期限に表示された年月の月末に情報が削除」と説明されています。
JICCの登録期間
JICCは、契約日が2019年10月1日より前か後かで期間の定めが分かれます。
| 情報の種類 | 契約日2019年9月30日以前 | 契約日2019年10月1日以降 |
|---|---|---|
| 返済状況に関する情報(延滞を含む) | 契約継続中及び完済日から5年を超えない期間(延滞情報は延滞継続中、延滞解消の事実は当該事実の発生日から1年を超えない期間) | 契約継続中及び契約終了後5年以内 |
| 取引事実に関する情報(債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等) | 当該事実の発生日から5年を超えない期間(債権譲渡は発生日から1年を超えない期間) | 契約継続中及び契約終了後5年以内(債権譲渡は発生日から1年以内) |
| 申込みに関する情報 | 照会日から6か月以内 | |
公式サイトには補足として、包括契約について「残高『0円』となる入金後、解約することなく残高『0円』のまま5年を経過した場合」「契約後、一度も残高が発生することなく5年を経過した場合」は、契約終了後5年を経過したものとみなす旨も記載されています。
KSCの登録期間
| 登録情報 | 登録期間 |
|---|---|
| 取引情報(延滞・代位弁済・強制回収手続等の事実を含む) | 契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
| 官報情報(破産・民事再生手続開始決定) | 当該決定日から7年を超えない期間 |
| 本人申告情報 | 登録日から5年を超えない期間 |
| 照会記録情報 | 照会日から1年を超えない期間(会員への提供は6か月を超えない期間) |
| 貸付自粛情報 | 申告日から5年を超えない期間 |
KSCの官報情報だけが7年です。ネット上で見かける「10年」という数字は、記事執筆時点のKSC公式の記載とは一致しません。数字を確認するときは、各機関の公式ページを直接ご覧ください。
KSCの延滞は「消える」のではなく「書き換わる」
KSCの公式資料には、他機関にはない独特の説明があります。「返済区分に登録された『延滞』は、次の起算日から5年経過後に『成約』に変更します」。起算日は、成約日/実行日が平成18年(2006年)10月以前の場合は「返済区分発生日」、平成18年(2006年)10月以後の場合は「延滞解消日」とされています。
同じ資料には「完了区分発生日から5年後に抹消」という記載もあります。つまり表示が変わるタイミングと、情報そのものが消えるタイミングは別です。
「情報が消える=審査に通る」ではない
ここは正直に書いておきます。事故情報の登録期間が過ぎて情報が削除されても、それは「審査に通る状態になった」ことを意味しません。
カード会社や金融機関の審査基準は公表されていません。KSCの公式サイトには「当センターはお客さまのローン等に関する個人信用情報を登録し、会員に提供しておりますが、審査業務は一切行っておりませんので、審査結果の理由についてはわかりません」と明記されています。信用情報機関は情報を提供する立場であって、可否を決める立場ではないということです。
「事故情報があっても発行されるカード」をうたう情報には注意してください。審査の結果を約束する表現は根拠がありません。この記事でも、そうしたカードの紹介は行いません。事故情報が登録されている間は審査が厳しくなる、という事実の把握にとどめるのが健全な向き合い方です。
自分の状態は開示で確認できる
「いつ消えるのか」を推測するより、開示請求をして自分の登録内容を見るほうが確実です。CICの開示報告書には保有期限の欄があり、KSCの開示報告書には返済区分・完了区分とその発生日が表示されます。JICCの開示書にも契約状態と異動参考情報等が表示されます。
各機関の開示手順は、それぞれ手数料も日数も違います。三機関の役割と全体像は信用情報を確認する方法にまとめています。
開示報告書をそろえたら、1冊のファイルにまとめて保管しておくと、保有期限や発生日をあとから見比べやすくなります。

返済に困っているときの相談先
支払いが厳しい状態が続いているなら、記録の期間を気にする前に、相談できる窓口があります。いずれも公的な機関または公益法人です。
公益財団法人 日本クレジットカウンセリング協会(JCCO)
公式サイトによると、同協会は「クレジットや消費者ローンを利用して多重債務に陥った方々について、消費者保護の立場から公正・中立なカウンセリングを行っています」とされています。「電話相談やカウンセリングは無料であり、またご希望により無料で任意整理と家計管理の改善をお手伝いしています」「当協会は公益財団法人ですので、ご相談料金など全て無料です」と明記されています。
電話窓口は「多重債務ほっとライン」0570-031640です。公式サイトには「お近くにセンター・相談室が無い場合でも、お一人で悩まずに多重債務ほっとラインにご連絡下さい」と案内されています。
法テラス(日本司法支援センター)
国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。公式サイトにサポートダイヤル0570-078374が掲載されています。
消費生活センター・消費者ホットライン
国民生活センターの公式サイトによると、消費生活センター等では「商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情や問合せなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっています」。全国統一の電話番号として消費者ホットライン188が用意されています。
・日本クレジットカウンセリング協会「多重債務ほっとライン」:0570-031640(相談は無料)
・法テラス・サポートダイヤル:0570-078374
・消費者ホットライン:188(お住まいの地域の消費生活センター等につながります)
いずれも記事執筆時点で各公式サイトに掲載されている連絡先です。
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事故情報についてのよくある質問
Q1. 「ブラックリスト」という書類はどこかにありますか?
ありません。信用情報機関にそうした名称のリストは存在しません。実際にあるのは、契約と支払いの事実を記録した信用情報です。CIC公式は信用情報を「客観的な取引事実を登録した個人の情報」と説明しており、人種や思想、保健医療、犯罪歴などの項目は一切含まれないとしています。
Q2. 何日遅れたら事故情報になりますか?
機関と契約の種類で条件が違います。CICの「異動」は「返済日より61日以上または3ヵ月以上の支払遅延」が条件です。JICCのファイルMの「元本・手数料遅延」は「約定返済日から61日以上、または3か月以上」、ファイルDの「延滞」は「入金予定日から3か月以上」とされています。数日の遅れが即座に「異動」になるわけではありませんが、CICの入金状況欄には記号として残ります。
Q3. 期間はどこも同じ5年ですか?
同じではありません。CICのクレジット情報は「契約期間中および契約終了後5年以内」、JICCは契約日が2019年10月1日以降なら「契約継続中及び契約終了後5年以内」、KSCの取引情報は「契約期間中および契約終了日から5年を超えない期間」です。一方でKSCの官報情報は「決定日から7年を超えない期間」で、ここだけ期間が異なります。
Q4. 完済すればすぐに記録は消えますか?
消えません。CICでは残債額が0円で終了状況にコメントが登録されている場合、報告日から5年間が保有期限とされています。KSCでは完了区分発生日から5年後に抹消と説明されています。完済は起算点であって、消える瞬間ではありません。
Q5. 情報が消えたら審査に通りますか?
そうとは限りません。審査基準は各社が公表していません。KSC公式にも「審査業務は一切行っておりませんので、審査結果の理由についてはわかりません」と書かれています。信用情報は判断材料のひとつであって、可否そのものではありません。
Q6. 延滞の情報を自分で消すことはできますか?
できません。信用情報は加盟会員が登録した事実の記録です。登録内容が事実と異なる場合は、JICC公式が案内するとおり「対象となる情報の登録会社へお問い合わせください」という流れになります。事実である記録を削除する手続きは用意されていません。
Q7. 記録が残っている間、できることはありますか?
まず、現在の登録内容を開示で把握することです。そのうえで、支払いが続いている契約を延滞なく進めること、返済が厳しいなら上に挙げた無料の相談窓口に早めに連絡することが現実的な選択肢です。CICでは、本人からの申し出により本人申告情報を登録する制度もあります(登録日より5年以内、本人からの申し出により期間内でも削除可能)。
支払い中の契約について、引き落とし日と金額を書き出しておくと見通しを立てやすくなります。書き込み式の家計簿を使うのも一つの方法です。
まとめ
数字だけを覚えようとすると、かえって混乱します。機関ごと・情報の種類ごとに定めが違うという前提を押さえて、自分の状況は開示で確認するのが確実です。
・「ブラックリスト」という名前のリストは実在しない。実際は事故情報(異動情報)が登録された状態
・CICの「異動」は61日以上または3ヵ月以上の延滞、保証履行、破産手続開始の決定
・CICのクレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内
・JICCは契約日が2019年10月1日より前か後かで期間の定めが分かれる
・KSCの取引情報は契約終了日から5年を超えない期間、官報情報は決定日から7年を超えない期間
・KSCの延滞は起算日から5年経過後に返済区分が「成約」に変更される
・情報が消えても審査に通ることを意味しない。審査基準は公表されていない
・返済に困っているなら、無料で相談できる公的な窓口がある
各機関の記載や連絡先は変更されることがあります。この記事の内容はいずれも記事執筆時点の公式情報にもとづくものです。判断の前に、以下の公式ページをご確認ください。
- CIC「CICが保有する信用情報」
- CIC「『信用情報開示報告書』表示項目の説明」(PDF)
- JICC「信用情報の内容と登録期間」
- 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」
- 公益財団法人 日本クレジットカウンセリング協会
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 国民生活センター「全国の消費生活センター等」

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