副業を始めると決まって話題になるのが「20万円を超えなければ申告しなくていい」という話です。ところがこのルールには細かい前提条件があり、それを省略して覚えていると、思わぬところで手続きが漏れます。
とくに見落とされやすいのが住民税です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。国税と地方税では根拠となる法律が違うため、扱いも別々に確認する必要があります。
この記事では、国税庁の資料と法令の条文で確認できた内容だけを整理し、副業の支払いに使ったカードの利用分をどう経費に反映するかまでをまとめます。

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いわゆる「20万円ルール」の正確な中身
国税庁の記載を確認する
国税庁のタックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和7年4月1日現在法令等)では、大部分の給与所得者は年末調整によって所得税額が確定し納税も完了するため確定申告の必要はないとしたうえで、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人(確定申告をすれば税金が還付される人は除く)は確定申告をしなければならないとされています。
そのうち、副業に関係する項目は次のとおりです。
「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」(国税庁タックスアンサーNo.1900より引用)
省略されがちな前提
この一文には、少なくとも三つの前提が含まれています。
- 給与を1か所から受けていること。2か所以上から給与を受けている場合は、別の項目(同ページの3番)の判定になります
- その給与の全部が源泉徴収の対象となること
- 20万円を超えるかどうかは「所得金額」で判定すること。売上そのものではなく、必要経費を差し引いた後の金額です
つまり「副業の収入が20万円以下だから申告不要」ではありません。判定するのは経費を引いた後の所得金額であり、しかも給与の受け取り方によって当てはまる項目が変わります。
確定申告が初めての方は、所得金額の考え方から申告書の書き方までを一通りつかめる確定申告の本を1冊手元に置いておくと、判定で迷ったときに確認しやすくなります。
給与を2か所以上から受けている場合
同ページの3番では、給与を2か所以上から受けていて、かつ給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える人が挙げられています。
そのうえで注記として、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の人は申告不要とされています。
なお同ページの1番では、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人も確定申告が必要とされています。
住民税は所得税とは別の話
ここが本記事でいちばん伝えたい部分です。
地方税法が定めていること
地方税法第三百十七条の二第一項は、市町村民税の納税義務者について、3月15日までに一定の事項を記載した申告書を賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならないと定めています。
そのただし書きでは、給与支払報告書または公的年金等支払報告書を提出する義務がある者から給与または公的年金等の支払を受けている者で、「前年中において給与所得以外の所得又は公的年金等に係る所得以外の所得を有しなかつたもの」などについては、この限りでないとされています。
読み替えると、給与以外の所得があった人は、このただし書きによる例外にあてはまりません。つまり、副業による所得がある場合、所得税の確定申告が不要であっても市町村民税の申告書の提出が必要になり得るということです。
確定申告をした場合はどうなるか
地方税法第三百十七条の三第一項では、前年分の所得税について確定申告書を提出した場合(政令で定める場合を除く)には、その確定申告書が提出された日に第三百十七条の二第一項から第四項までの規定による申告書が提出されたものとみなす、と定められています。
したがって、所得税の確定申告をしていれば、あらためて住民税の申告書を提出する必要は原則としてありません。問題になるのは「所得税の確定申告はしていないが、副業の所得はある」というケースです。
住民税の申告書の提出先や様式、細かい取扱いは市区町村によって異なります。お住まいの市区町村のホームページや窓口で確認してください。判断に迷う場合は、税理士または所轄の税務署、市区町村の税務担当課にご確認ください。

副業の所得は事業所得か、雑所得か
所得の区分によって、使える制度や損益通算の可否が変わります。ただしこの区分は、機械的に決まるものではありません。
国税庁の通達が示す判定の考え方
国税庁の所得税基本通達35-2の注では、事業所得と認められるかどうかは「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」とされています。
そのうえで「なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する」と記載されています。
雑所得に区分される場合の注意点
国税庁のタックスアンサーNo.1500「雑所得」(令和7年4月1日現在法令等)では、令和4年分以後の業務に係る雑所得について次の取扱いが説明されています。
| 前々年分の業務に係る雑所得の収入金額 | 取扱い |
|---|---|
| 300万円以下 | 総収入金額および必要経費に算入すべき金額を、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができる(現金主義の特例、確定申告書にその旨の記載が必要) |
| 300万円超 | 現金預金取引等関係書類を保存する必要がある |
| 1,000万円超 | 確定申告書を提出する場合、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要 |
また同ページには、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は他の所得の金額と損益通算できないという注意事項も記載されています。
事業所得と雑所得の区分は、社会通念上の判断を含むため、金額だけで一律に決まるものではありません。この記事で「あなたはこちらに該当します」と断定することはできません。判断に迷う場合は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

記録は会計ソフトでなくても始められます。まずは市販の金銭出納帳に、日付・内容・金額を書き留めていくだけでも、あとから整理する材料になります。
カードの利用分を経費に反映する
ここからが実務です。副業の支払いにカードを使っている場合、どこまでが経費になるのかを整理します。
必要経費の基本
国税庁のタックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」(令和7年4月1日現在法令等)では、事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で必要経費に算入できる金額として、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額と、その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額が挙げられています。
計上の時期は「その年において債務の確定した金額」です。カードの引き落とし日ではなく、商品やサービスの提供を受けた時点が基準になります。
私用と混ざる支出は按分する
副業では、自宅の通信費や電気代のように、私生活と共通する支出が多く発生します。
所得税法第45条第1項第1号は、家事上の経費およびこれに関連する経費で政令で定めるものを必要経費に算入しないと定めています。その政令にあたる所得税法施行令第96条第1号では、家事上の経費に関連する経費のうち「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」は対象から除かれるとされています。
そして所得税基本通達45-2では、この「主たる部分が業務の遂行上必要」であるかどうかを、支出する金額のうち業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するとされ、ただし書きとして、50%以下であってもその必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えないと記載されています。
按分の考え方の例
たとえば自宅のインターネット回線を副業でも使っている場合、1か月あたりの使用時間のうち副業に充てた時間の割合を用いる、といった基準が考えられます。大切なのは、割合そのものより「どういう根拠でその割合にしたか」を記録として残すことです。
カードを分けると按分の手間が減る
副業の支払いだけを別のカードにまとめると、そのカードの明細がそのまま副業の支出一覧になります。按分が必要なのは自宅の通信費や光熱費など一部だけになり、記帳の負担が大きく下がります。
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よくある質問
Q1. 副業の所得が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
所得税については、タックスアンサーNo.1900に示された条件に当てはまらなければ確定申告が必要な人には含まれません。一方、住民税については、地方税法第三百十七条の二第一項ただし書の例外は「給与所得以外の所得を有しなかつたもの」等を対象としているため、副業の所得がある場合は市町村民税の申告書の提出が必要になり得ます。お住まいの市区町村にご確認ください。
Q2. 20万円は売上のことですか、利益のことですか?
タックスアンサーNo.1900の記載は「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」です。所得金額は、収入金額から必要経費を差し引いた後の金額を指します。
Q3. 会社員で給与を2か所から受けています。
その場合はタックスアンサーNo.1900の3番の判定になります。年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超えるかどうかで判断され、さらに注記による例外もあります。ご自身の状況を当てはめて確認してください。
Q4. 副業の所得は事業所得にできますか?
所得税基本通達35-2の注では、事業所得と認められるかどうかは社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するとされ、帳簿書類の保存がない場合(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)には業務に係る雑所得に該当することに留意するとされています。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
Q5. 副業で赤字が出たら給与所得と相殺できますか?
タックスアンサーNo.1500では、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は他の所得の金額と損益通算できないとされています。所得区分によって扱いが異なりますので、ご自身の区分を確認してください。
Q6. カードの明細だけを保存しておけば大丈夫ですか?
経費の内容を説明できる記録を残すことが前提になります。所得の区分によっては書類の保存が制度上求められる場合もあり、タックスアンサーNo.1500では前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方について現金預金取引等関係書類の保存が必要とされています。
カードの明細とあわせて、レシートや領収書も月ごとにまとめて残しておくと、経費の内容を説明しやすくなります。月別に仕分けられる領収書ファイルが1冊あると便利です。

まとめ
副業の確定申告でおさえておきたいのは次の三点です。
- いわゆる20万円ルールには前提条件がある。給与の受け取り方と、判定が所得金額であることを確認する
- 住民税は所得税とは別の制度。副業の所得がある場合、所得税の確定申告をしていなければ市町村民税の申告書の提出が必要になり得る
- 経費は債務が確定した年で計上し、私用と混ざる支出は按分して根拠を残す
副業用のカードを分けておくと、この三つ目の作業が大幅に楽になります。
原文は国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」と同No.1500「雑所得」で確認できます。地方税法の条文はe-Gov法令検索の地方税法で読めます。副業用カードの選び方はクレジットカードの法人・個人の使い分けの記事もご覧ください。
※税務に関する記載は、国税庁タックスアンサーNo.1500・No.1900・No.2210(いずれも令和7年4月1日現在法令等)、所得税法第45条、所得税法施行令第96条、所得税基本通達35-2・45-2、地方税法第三百十七条の二・第三百十七条の三に基づいています。実際の税務処理は個別の事情によって異なりますので、税理士または所轄の税務署、お住まいの市区町村の税務担当課にご確認ください。
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