クレジットカードには「国内旅行傷害保険」が付いていることがあります。ただ、この保険については、率直に書いておきたいことがあります。
国内旅行傷害保険は、海外旅行傷害保険とは中身がまったく別物です。そして使いどころが限られます。
理由は2つあります。ひとつは、補償の中心が「傷害死亡・後遺障害」と入院・手術・通院の定額給付であり、海外旅行保険にあるような治療費用(実費の補償)が付かないカードが多いこと。もうひとつは、補償される場面が「公共交通乗用具に乗っている間」「宿泊施設の火災」「宿泊を伴う募集型企画旅行に参加している間」などに限定されていることです。
この記事では、実際のカード会社のガイドの記載を確認しながら、何が補償されて何が補償されないのかを整理します。記載内容は記事執筆時点で公表されているものです。

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海外旅行保険と国内旅行保険は、設計思想が違う
まず全体像から。両者の違いは、公的医療保険があるかどうかに由来します。
| 項目 | 海外旅行傷害保険 | 国内旅行傷害保険 |
|---|---|---|
| 傷害死亡・後遺障害 | あり | あり(中心的な補償) |
| 治療費用(実費補償) | 傷害治療費用・疾病治療費用がある | 付かないカードが多い |
| 入院・手術・通院の給付 | ― | 日額などの定額給付が中心 |
| 病気(疾病) | 疾病治療費用でカバー | 対象外(傷害=ケガのみが対象) |
| 携行品損害 | あるカードが多い | 付かないカードが多い |
| 賠償責任 | あるカードが多い | 付かないカードが多い |
国内には公的医療保険があるため、旅行先で病院にかかっても自己負担は原則3割です。海外のように治療費が数百万円になるという事態は起きにくく、実費を補償する必要性が海外ほど高くありません。これが「治療費用が付かない」という設計の背景にあります。
加えて重要な点として、国内旅行傷害保険は「傷害」保険です。旅先で風邪をひいた、持病が悪化した、といった病気は対象になりません。ケガによる損害だけが補償の対象です。
保険の給付条件に届かないような軽いすり傷や靴ずれは、旅先で自分で手当てすることになります。絆創膏などをまとめた携帯用の救急セットを旅行バッグに入れておくと、いざというときに慌てずに済みます。
実際のガイドを読んでみる
楽天カード公式サイトからリンクされている「楽天プレミアムカード付帯国内旅行保険ガイド」の記載を確認します。同カードは国内旅行傷害保険が自動的に付帯されるとされています。
補償される場面が限定されている
ガイドの「補償される場合」には、次の3つの場面が挙げられています。日本国内において、会員資格期間中に、以下のいずれかに該当する間の事故によって被った傷害に限り補償されるという構成です。
- 公共交通乗用具に乗客として搭乗している間の事故
- 宿泊施設で宿泊中の火災または破裂・爆発による事故
- 宿泊を伴う募集型企画旅行に旅行者として参加している間の事故(ツアーバス等での車中泊は除く)
ガイドによると、「公共交通乗用具」とは航空法、鉄道事業法、海上運送法、道路運送法に基づき、それぞれの事業を行う機関によって運行される航空機、電車、船舶、バス、タクシーなどをいい、当該旅行のために乗用するものに限られます。「宿泊施設」とはホテル等の宿泊施設を指します。
この3つの場面に当てはまらない事故は、対象外です。たとえば、自家用車で出かけた旅行先で転んでケガをした、観光地を歩いていて階段から落ちた、といったケースは、この構成では補償されないことになります。「旅行中ならいつでも補償される」保険ではありません。
補償の内容と金額
同ガイドに記載されている保険金の種類と金額は、次のとおりです(記事執筆時点)。
| 保険金の種類 | 保険金額 | 支払われる主な条件 |
|---|---|---|
| 傷害死亡保険金 | 5,000万円 | 旅行行程中の事故によるケガのため、事故発生日からその日を含めて180日以内に死亡した場合 |
| 傷害後遺障害保険金 | 最高5,000万円 | 事故発生日からその日を含めて180日以内に後遺障害が残った場合。程度に応じて保険金額×4〜100% |
| 入院保険金 | 日額5,000円 | 事故発生日からその日を含めて6日経過後においてもなお入院している場合。180日以内の入院日数につき、1日目の入院から支払い |
| 手術保険金 | 入院保険金日額×10(入院中の手術)/×5(それ以外) | 6日経過後に入院または通院の状態にあった場合に限り、180日以内に受けた手術が対象 |
| 通院保険金 | 日額3,000円 | 6日経過後においてもなお通院している場合。180日以内の通院日数につき、1日目の通院から90日を限度に支払い |
この表を見て気づいてほしいことがあります。治療費用(実費の補償)の項目が、そもそも存在しません。あるのは死亡・後遺障害と、入院・手術・通院の定額給付です。
そして、入院保険金・通院保険金には「6日経過後においてもなお」という条件が付いています。旅先でケガをして2日入院した、3日通院した、という程度では対象になりません。給付されるのは、6日を超えて入院・通院が続いたケースです(その場合は1日目にさかのぼって支払われます)。

保険金が支払われない主な場合
同ガイドには、支払われない主なケースも列挙されています。
- 故意、重大な過失、自殺行為、犯罪行為または闘争行為によって被った傷害
- 酒気帯び運転、無免許運転中、麻薬等を使用しての運転中に被った傷害
- 脳疾患、疾病または心神喪失によって被った傷害
- 地震もしくは噴火またはこれらによる津波によって被った傷害
- 戦争(テロ行為を除く)、暴動などによって被った傷害
- 山岳登はん(登山用具を使用するもの、ロッククライミングを含む)、リュージュ、ボブスレー、スカイダイビング、ハンググライダー搭乗など、特に危険度の高いスポーツをしている間の事故により被った傷害
- 頸部症候群(いわゆる「むちうち症」)、腰痛その他の症状を訴えている場合でも、それを裏付けるに足りる医学的他覚所見のないもの
3番目に注目してください。疾病(病気)によって被った傷害は対象外と明記されています。「傷害保険」であるということが、ここにも表れています。
複数のカードを持っていても合算されない
同ガイドには、次の注記があります。「他社分を含む複数のクレジットカードを所有し、かつ複数の保険が適用される場合でも、傷害死亡・後遺障害保険金額および入院・手術・通院保険金額は、最も補償額の高いクレジットカードの保険金額が上限となります」。
海外旅行保険では治療費用などが合算される扱いになっているカードもありますが、この国内旅行保険では入院・手術・通院についても合算されないと明記されています。国内旅行保険目的でカードを複数枚持っても、補償額は積み上がりません。
被保険者の範囲
同ガイドの「被保険者の範囲」には、「楽天プレミアムカード本カード会員様および楽天プレミアムカード家族カード会員様」と記載されています。家族カードを持っている家族は対象ですが、カードを持っていない家族については、この記載からは対象に含まれません。
この構造は海外旅行傷害保険と共通しています。海外側の補償内容の比較はクレジットカードの海外旅行保険を補償内容で比較した記事で扱っています。
では、国内旅行保険はどう位置づければよいか
ここまでの内容を踏まえて、正直な結論を書きます。
- 国内旅行保険を目的にカードを選ぶ必要は、あまりありません。補償される場面が限定的で、治療費用も付かないためです
- ただし「付いていて損はない」ものではあります。保険料の追加負担なく、電車・飛行機・バスでの事故や宿泊施設の火災といった、まれだが重大な事故に備えられます
- カードを選ぶときの比較軸としては、海外旅行保険のほうがはるかに重要です。海外は治療費用の額がそのまま実利につながります
- 日常のケガに備えたいなら、傷害保険を別途検討するほうが合理的です。カードの国内旅行保険は、その代わりにはなりません
あわせて、日本国内であれば公的医療保険が使えるという前提を忘れないでください。旅先で病院にかかっても、健康保険証(またはマイナ保険証)があれば自己負担は原則3割です。医療費が高額になった場合は高額療養費制度もあります。この土台があるからこそ、カードの国内旅行保険は「上乗せ」の位置づけになっています。
旅先で受診するときに困らないよう、保険証やお薬手帳は保険証ケースにまとめて持っていくと、カード類と混ざらずにすぐ取り出せます。

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比較するときに見るべきポイント
それでも国内旅行保険を比べたい場合、次の項目を確認してください。
| 確認項目 | 見るべき理由 |
|---|---|
| 自動付帯か利用付帯か | 利用付帯なら、旅行代金の支払い方が条件になります |
| 補償される場面の範囲 | 公共交通乗用具のみか、宿泊や企画旅行も含むかで大きく変わります |
| 入院・通院保険金の支払い条件 | 「6日経過後」などの条件があるかどうか。ここで実際の使いやすさが決まります |
| 入院・通院の日額 | 日額5,000円と3,000円では、給付額が変わります |
| 被保険者の範囲 | 家族カード会員が含まれるか、カードを持たない家族はどうか |
| 治療費用の有無 | 付いているカードは少数派です。付いていれば大きな差別化要素になります |
カードの付帯保険全体の比較はクレジットカードの付帯保険を比較した記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 国内旅行保険で、旅先の病気は補償されますか?
補償されません。国内旅行傷害保険は「傷害」つまりケガを対象とする保険で、楽天プレミアムカードのガイドにも「脳疾患、疾病または心神喪失によって被った傷害」は保険金を支払えない主な場合として明記されています。病気については公的医療保険と、必要に応じて医療保険で備えることになります。
Q2. 自家用車での旅行中の事故は対象ですか?
楽天プレミアムカードのガイドが定める「補償される場合」は、公共交通乗用具への搭乗中、宿泊施設での火災・破裂・爆発、宿泊を伴う募集型企画旅行への参加中の3つです。自家用車での移動中の事故は、この3つには該当しません。自動車の事故については自動車保険で備えることになります。
Q3. 2泊3日の旅行でケガをして、3日通院しました。給付されますか?
楽天プレミアムカードの条件では、通院保険金は「事故発生日からその日を含めて6日経過後においてもなお通院している場合」に支払われます。3日で治療が終わっているケースは、この条件を満たしません。カードによって条件は異なりますので、お手元のカードのガイドをご確認ください。
Q4. 国内旅行保険が付いているカードを何枚か持っています。合算されますか?
楽天プレミアムカードのガイドには、他社分を含む複数のクレジットカードで複数の保険が適用される場合でも、傷害死亡・後遺障害保険金額および入院・手術・通院保険金額は、最も補償額の高いクレジットカードの保険金額が上限となる旨が記載されています。積み上がりません。
Q5. 国内旅行保険は、どのランクのカードから付いてきますか?
一般にゴールド以上のカードに付いていることが多いものの、カード会社によって扱いが異なります。この記事で確認できたのは楽天プレミアムカードの内容です。他のカードについては、そのカード会社の公式ページで付帯の有無と条件をご確認ください。
Q6. 保険を使うときは、どこに連絡すればよいですか?
楽天プレミアムカードの国内旅行保険ガイドには、国内旅行の事故等について「楽天保険の総合窓口 あんしんダイヤル」(受付時間24時間・365日)が案内されています。カードごとに窓口が異なりますので、旅行前にガイドを確認して連絡先を控えておくと安心です。
まとめ
- 国内旅行傷害保険は、海外旅行傷害保険とは設計がまったく異なる
- 中心は傷害死亡・後遺障害と、入院・手術・通院の定額給付。治療費用(実費補償)が付かないカードが多い
- 病気(疾病)は対象外。ケガのみが補償される
- 補償される場面が公共交通乗用具・宿泊施設の火災・宿泊を伴う募集型企画旅行に限定されていることがある
- 入院・通院保険金には「6日経過後においてもなお」といった条件が付く
- 複数カードでも合算されない
- 正直なところ、カード選びの決め手にはなりにくい。海外旅行保険のほうを重視するのが合理的
この記事の内容は、楽天カード公式サイトに掲載されている「楽天プレミアムカード付帯国内旅行保険ガイド」の記載に基づいています。楽天カードの海外旅行傷害保険のページやエポスカードの海外旅行傷害保険のページと読み比べると、海外と国内の設計の違いがよく分かります。補償内容は予告なく変更される場合がありますので、旅行前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。

※この記事の情報は執筆時点のものです。補償内容・保険金額・付帯条件は変更される場合があります。実際の保険金支払いの可否は、普通保険約款および特約等の規定に基づきます。最新の情報は各カード会社の公式サイトでご確認ください。
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