ご利用明細に、身に覚えのない請求が並んでいた。そんなとき、動く順番は決まっています。①カード会社に電話してカードを止める、②警察に届け出る、③カード会社の案内に従って書類を提出する。この3つを、気づいたその日のうちに始めてください。
そして、この記事でいちばん伝えたいことがあります。カードの補償には「届出をした日から、さかのぼれる期間」に上限があるという点です。その期間より前に発生した不正利用は、補償の対象から外れます。明細を長く放置していると、取り返せる金額が減っていくということです。
この記事では、実際のカード会員規約に書かれている補償の条件を確認しながら、届出の期限、書類の提出期限、そして補償されないケースを整理します。なお本文で扱う数値や条件はすべて記事執筆時点で各社が公表しているものです。

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不正利用に気づいたら、この順番で動く
① カード会社に連絡してカードを止める
カード裏面や公式アプリに記載されている紛失・盗難受付デスクに連絡します。多くのカード会社が24時間365日で受け付けています。この連絡がすべての起点になります。補償の対象期間は「カード会社が連絡を受理した日」から数えて決まるため、連絡が1日遅れれば、対象になる期間も1日ずつ後ろにずれていきます。
連絡した時点でカードは無効になり、それ以降の不正利用は止まります。手元にカードがあっても、番号だけが盗まれているケースは珍しくないため、「カードは財布にあるから大丈夫」と判断しないでください。
② 警察へ届け出る
カード会社への連絡と並行して、最寄りの警察署に届け出ます。これは任意のステップではありません。三井住友カードの会員規約は第13条第2項で「速やかにその旨を当社に通知し、最寄警察署に届出るものとします」と定め、続く第14条(会員保障制度)では、この警察および当社への届出がなされたときに損害をてん補するという構成になっています。つまり警察への届出が、補償の前提条件として規約に組み込まれているということです。
楽天カードの会員規約も同様で、第17条第1項の但し書きは「速やかに当社に直接電話等により連絡の上、最寄りの警察署に届け、かつ所定の届出書を当社に提出し当社が認めた場合」と、3つの行為をセットで求めています。
③ カード会社の案内に従って書類を提出する
カード会社から届出書や被害状況の確認書類が送られてきます。ここでもう一つの期限が登場します。詳しくは後述しますが、書類の提出にも日数の制限があります。届いた書類は放置せず、その週のうちに書いて返すつもりでいてください。
連絡・警察への届出・書類提出は「セット」です。どれか一つでも欠けると、規約上は補償の条件を満たさない扱いになり得ます。
補償には「届出日からさかのぼれる期間」がある
ここが本題です。カードの盗難補償は、届出をすれば過去のすべての不正利用が戻ってくる仕組みではありません。届出日を基準にした一定期間内の被害だけが対象になります。
記事執筆時点で各社が公表している規約・公式ページの記載は次のとおりです。
| カード会社 | 公表されている記載 | 出典 |
|---|---|---|
| 楽天カード | 会社が連絡を受理した日の60日前以降に発生したカード等の使用による支払債務について、支払を免除 | 楽天カード会員規約 第17条第1項 |
| 三井住友カード | 紛失・盗難の通知を受領した日の61日以前に生じた損害は、てん補の責を負わない | 三井住友カード会員規約 第14条第3項(8) |
| エポスカード | お届け日を含め、61日前にさかのぼり、それ以降の不正使用による損害を全額補償 | エポスカード公式「海外旅行でも安心」 |
表現は各社で違いますが、示している内容は同じ方向を向いています。届出日から60日ほど前までが補償のラインで、それより古い被害は対象外という設計です。
この「60日」という数字が意味するのは、明細を毎月見ていれば十分に間に合う、ということでもあります。逆に、明細を半年放置していた場合、最初の数か月分は取り返せない可能性が高くなります。
加えて楽天カードの規約には、もう一段の上限があります。第17条第3項は、盗難が行われた日から2年を経過した後に連絡した場合、支払免除の規定は適用されないと定めています。60日ルールとは別に、そもそもの受付の外側の線が引かれているということです。

書類の提出にも30日の期限がある
届出の期限とは別に、書類の提出期限があります。これは見落とされがちです。
- 楽天カード:他人によるカード等の使用を知った日から30日以内に、支払債務の免除に必要と認める書類を提出する(会員規約 第17条第1項)
- 三井住友カード:損害の発生を知った日から30日以内に、損害のてん補に必要と認める書類を提出する(会員規約 第14条第4項)
どちらも「知った日から30日以内」です。カード会社から書類が届いてから30日ではなく、自分が被害に気づいた日が起点になっている点に注意してください。
さらに両社とも、被害状況等の調査に協力することを会員の義務として定めています。楽天カードの規約では、書類の提出を拒んだ場合や調査に協力しない場合が、そのまま補償の対象外事由として列挙されています。
補償の対象外になる主なケース
ここが読者の期待と実際の規約とで、いちばんギャップが出る部分です。楽天カード会員規約 第17条第2項と、三井住友カード会員規約 第14条第3項に列挙されている内容を整理します。
| 対象外になるケース | 楽天カード | 三井住友カード |
|---|---|---|
| 会員の故意または重大な過失によるもの | あり | あり(故意または重大な過失) |
| 家族・同居人など関係者が関与・不正使用 | あり(家族・同居人・留守人その他委託を受けて身の回りの世話をする者等) | あり(家族・同居人・カード受領の代理人) |
| 暗証番号の入力を伴う取引 | あり(登録暗証番号との一致を確認して行われた利用) | あり(暗証番号の入力を伴う取引) |
| 届出内容が虚偽だった場合 | あり | あり |
| 書類提出を拒む/調査に協力しない | あり | あり(第4項の義務を怠った場合) |
| 戦争・地震等による著しい社会秩序の混乱中 | あり | あり |
| 規約に違反している状況で生じたもの | あり | あり(規約に違反する使用に起因する損害) |
| 保障期間外の損害 | ― | あり(保障期間は入会日から1年間・毎年自動継続) |
| 類似の被害を複数回受けており、会員の過失によるもの | ― | あり |
並べてみると、「他人に使われた」という事実だけでは足りず、会員側の管理状況が問われる構造になっていることが分かります。カードを人に貸していた、暗証番号をカードと一緒に保管していた、といった事情があると、重大な過失として扱われる可能性があります。
対象外の項目はカード会社ごとに違います。ここに挙げたのは楽天カードと三井住友カードの会員規約の記載です。お手元のカードについては、そのカード会社の会員規約をご確認ください。
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暗証番号が使われた取引は、扱いが大きく変わる
ここは特に知っておいてほしいところです。登録した暗証番号が入力されて成立した取引は、原則として会員の負担になります。
楽天カード会員規約 第5条第3項は、こう定めています。「カード利用の際、登録された暗証番号が使用されたときは、暗証番号について盗用その他事故があっても、そのために生じる一切の債務について会員が支払の責めを負うものとします」。
ただし同じ条文には但し書きが続きます。「暗証番号の管理について会員に故意又は過失がないと当社が認めた場合にはこの限りではありません」。三井住友カードの会員規約 第14条第3項(6)も同じ構造で、暗証番号の入力を伴う取引の損害を対象外としつつ、「当社に登録されている暗証番号の管理について、会員に故意または過失がないと当社が認めた場合はこの限りではありません」としています。
つまり、暗証番号が使われた取引は「原則は自己負担、暗証番号の管理に落ち度がなかったと認められれば例外」という設計です。カードのケースに暗証番号のメモを入れていた、誕生日をそのまま設定していた、といった事情は、この判断に不利に働き得ます。
日本クレジット協会も、暗証番号は他人に推測されにくい番号を設定し、他人に教えないよう呼びかけています。暗証番号は絶対に他人に教えないでください。カード会社の職員を名乗る電話であっても同じです。

偽造カードが使われた場合は扱いが違う
盗難・紛失とは別の類型として、偽造カードがあります。こちらは規約上、より会員に有利な書き方になっています。
楽天カード会員規約 第17条第4項は「偽造カードの使用に係るカード利用代金については、会員は支払の責を負わないものとします」と定めています。三井住友カード会員規約 第13条第3項も同様に「偽造カードの使用に係る債務については、本会員は支払いの責を負わないものとします」としています。
ただし両社とも次項で、偽造カードの作出または使用について会員に故意または過失があるときは会員が負担すると定めています。ここでも調査への協力は求められます。
カード会社と加盟店にも、法律上の義務がある
不正利用対策は、利用者だけの問題ではありません。割賦販売法にカード事業者側の義務が定められています。
割賦販売法 第35条の16は、クレジットカード番号等取扱業者に対し、経済産業省令で定める基準に従って「クレジットカード番号等の漏えい、滅失又は毀損の防止その他のクレジットカード番号等の適切な管理のために必要な措置」を講じることを義務づけています。
さらに第35条の17の15は、加盟店にあたる事業者に対して「利用者によるクレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置」を講じることを義務づけています。条文はe-Gov法令検索の割賦販売法のページで確認できます。
日本クレジット協会は、これらの義務を含む改正割賦販売法が平成30年6月1日に施行されたと公表しています。カード会社が不審な取引を検知してカードを一時的に止めるのも、この流れの中にある対応です。
不正利用の被害は、いまどのくらい起きているのか
日本クレジット協会が公表している「クレジットカード不正利用5つの対策」のページには、被害額が示されています。
- 2024年のクレジットカード不正利用被害額は555.0億円で、過去最多
- その内訳の92.5%が、インターネット取引における「番号盗用」の被害
- 2025年の被害額は510.5億円となり、前年に比べて被害額・不正発生率ともに減少傾向
注目したいのは、被害の大半がカードそのものを盗まれたのではなく、番号を盗まれた被害だという点です。財布の中にカードがあるかどうかは、被害の有無をまったく保証しません。明細の確認が最大の防御になるのは、この構造があるからです。
被害を早く見つけるためにできること
- カード会社のアプリで利用通知(即時通知)をオンにする。決済のたびに通知が届くため、身に覚えのない決済にその場で気づけます
- 月に一度は明細を最初から最後まで見る。少額のテスト決済から始まる手口があるため、金額の小さい項目こそ確認します
- 本人認証サービス(EMV 3-Dセキュア)を登録しておく。日本クレジット協会が5つの対策の一つとして挙げています
- 使っていないカードは解約するか、利用可能枠を下げておく
明細の見方についてはクレジットカードの明細を確認する方法をまとめた記事でも整理しています。カード自体を紛失したときの動き方はクレジットカード紛失時の届出手順を解説した記事が参考になります。
よくある質問
Q1. 不正利用に気づいたのが、被害から3か月後でした。補償されますか?
直近60日ほどの被害は対象になる可能性がありますが、それより古い分は対象外になる可能性が高いです。楽天カードは連絡受理日の60日前以降、三井住友カードは通知受領日の61日以前を対象外と定めています。まずは日付を問わず、すぐにカード会社へ連絡してください。どこまで対象になるかはカード会社の調査で判断されます。
Q2. 家族が勝手に使っていた場合はどうなりますか?
補償の対象外になる可能性が高いです。楽天カードは「会員の家族、同居人、留守人その他会員の委託を受けて身の回りの世話をする者等、会員の関係者が紛失、盗難等に関与し、又は不正使用した場合」を、三井住友カードは「会員の家族・同居人・当社から送付したカードまたはチケット等の受領の代理人による不正利用」を、それぞれ対象外として明記しています。
Q3. 警察への届出は本当に必要ですか?
必要です。三井住友カードの会員保障制度は「警察および当社への届出がなされたとき」を補償の条件としており、楽天カードも「最寄りの警察署に届け」ることを但し書きの要件に含めています。届出をすると受理番号が発行されますので、書類に記入できるよう控えておきましょう。
Q4. カード会社に連絡すると、支払いはどうなりますか?
調査が終わるまでは請求が保留になったり、一度引き落とされたうえで後日返金されたりと、カード会社によって扱いが異なります。引き落とし日が近い場合は、その点も含めて電話で確認してください。調査には時間がかかることが一般的です。
Q5. 番号だけ盗まれた場合も、カードの再発行は必要ですか?
必要です。番号・有効期限・セキュリティコードが漏れている以上、そのカードは使い続けられません。カード会社に連絡すれば再発行の案内があります。再発行にあたっては、そのカードを登録しているサブスクリプションや公共料金の支払い先を洗い出し、新しい番号に変更する作業が発生します。
Q6. 「補償される/されない」の判断は誰がしますか?
カード会社です。規約はいずれも「当社が認めた場合」という表現を使っており、提出された書類と調査結果をもとにカード会社が判断します。だからこそ、書類を期限内に出すこと、調査に協力することが実務上とても重要になります。
まとめ
不正利用への対処は、スピードがそのまま金額に直結します。
- 気づいたらまずカード会社へ連絡してカードを止める。次に警察へ届出、そして書類の提出
- 補償の対象は、届出日から60日ほどさかのぼった範囲。それより古い被害は対象外になり得る
- 書類の提出期限は被害を知った日から30日以内(楽天カード・三井住友カードの場合)
- 暗証番号が使われた取引は原則として自己負担。管理に落ち度がないと認められた場合が例外
- 家族・同居人による利用は対象外になる可能性が高い
- 被害の大半は「番号盗用」。カードが手元にあっても安心はできない
ここに書いた条件は、あくまで楽天カードと三井住友カード、エポスカードが記事執筆時点で公表している内容です。カードごとに期間も条件も異なりますので、お手元のカードの会員規約を一度は読んでおくことをおすすめします。楽天カードの会員規約や三井住友カードの会員規約は、いずれも公式サイトで公開されています。

※この記事の情報は執筆時点のものです。補償期間・条件・免責事由はカード会社ごとに異なり、変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトおよび会員規約でご確認ください。
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